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カザフスタンで肉祭り

8/17から4日間、Kashiwa Daisukeくんのサポートでカザフスタンの都市アルマトイで公演を行なってきました。
アルマトイはカザフスタンで最大の都市、160万人を超える人口を抱える元首都です。日本の通念的には中央アジアと捉えられがちですが、ホテルに着いて街並みを眺めた第一印象は、普通にヨーロッパじゃん です。カフェやバーが広い石畳の歩道脇に並び、テラスで生バンドが演奏している風景は、今まで訪れた欧州のそれとなんら変わりありません。スラブ系白人からアジア系、ヒジャブを被ったイスラム系ととても多様な人種が街を歩き、空気の落ち着き具合から治安の良さを感じます。気温は高いのですが風は乾いていて心地よく、めっちゃ居やすい。

居やすい 夜はクーラーすらいらない

翌日、本番が行われるシアターに。建築に説得力があります。歴史の底力を感じざるを得ません。今回は現地在住の弦楽器奏者を加えての公演、しかも当日に初対面というなかなかの強行コラボです。

裁判所のような会場

海外の方々との挨拶の際、お会いする人数やタイミングもあり良くあるケースとして
My name is...やI'm...などを一切省き、自分の名前のみを握手しながら交換し合う、ということが良くあります。僕の場合、いきなり下の名前を言うと お前、と一言言われたと勘違いする方が多いので、覚えやすいようにJima、と言うようにしているのですが、この度も例に漏れず3人の現地ミュージシャンとその流れで順番に挨拶する中、ロシア人のビオラ奏者の女性の方と交わした際のことでした。握手しながらお互い笑顔で名前を言い合うと、

僕  ジマ
彼女 ニカ

...時間が止まったかのような瞬間が訪れ、なんだ、一体この人は俺の何を知ってるんだ、という疑問と同時に、2人で僕のアーティスト名をかわりばんこに言いあっているだけの遊びのようにも感じられ、結局僕だけが余計に笑っている意味不明な1.2秒が過ぎたのでした。
聞けば彼女はベロニカちゃんだそうで、単にお互いに略称で挨拶しただけの話なのですが、その結果素敵なコインシデンスが生まれた訳です。
後にこれを彼女に説明すると、少し驚いたように笑っていましたが、彼女の瞳の奥に日本語で「知らんがな」の一言が深く刻まれていたのがはっきり見てとれました。

中央の女性がジマニカ問答のベロニカちゃん

本番は無事終わり、大きな拍手とスタンディングオベーションで幕を閉じ、ホワイエでは柏くんのサインCDを求める列が伸びていました。
これは結構時間かかるだろうなと思い、会場近くのバーを探しバイオリンのYuriちゃんとビールを飲んで打ち上げ0次会をしていたところ、バーのオーナーらしき人からどこから来たんだと聞かれ、日本だ、と答えるとたいそう驚いたようで、見ろ、鳥肌が立った、とわざわざ腕を見せてきたので、日本人はよっぽど珍しかったのだと思います。

その後打ち上げのお店は素敵な内装の肉レストランにて、馬と羊の肉祭りの始まりです。テーブルが様々なプロテインで埋め尽くされていき、筋トレをしてから来れば良かったなと後悔が募ります。
味付けは正直なところ至ってシンプルな塩味で硬派な舌触りなのですが、いかんせん肉のポテンシャルが高いため薄めの味付けでもどんどん食べれてしまいます。特に馬肉のパンチ力がマッシブ、渾身の赤身が僕に合成されていくのが分かります。そういえば現地の男性はマッチョも多い反面、自分に甘そうな人も多い印象で、やはりこういうのを日々食べてれば自分を試されるんだな、俺も日本に帰ったら年明けくらいからパンプアップしようと心に誓いました。

遊牧民の血が沸き立つ現地コーディネイターと肉にアガる女子

この日、日本語とカザフ語間の通訳を担ってくれたロシア人と日本人のハイブリッド アリナちゃんという高校生の女の子が本番から打ち上げまで我々に帯同してくれていたのですが、現地ミュージシャンとのやりとりでも大変助かり、超フレンドリー、ドラムも少し叩けるとてもいい子でした。打ち上げの席で将来スピーチをする仕事がしたい、と固有名詞の職業ではなく、行為そのもので夢を語っていたのにとても心を打たれ、なるほどそこからスタートする方がよっぽど夢に到達するための近道なんじゃないか、と痛く感心した次第です。

アリナちゃん曰く「山はカザフスタンの誇りです」

翌日、数年前に柏くんをカザフスタンに招いてくれた、今回の主催とは別のカザフスタン人が経営するビールバーに招かれ、柏くんと彼は数年ぶりの再会に喜びながら、我々は無限にカザフスタンのクラフトビールを振る舞われるという至高のオフがやって参りました。彼の名はTimur君。カザフスタン大使の家に産まれ、モデルで俳優で実業家というフルコンボを達成している、エリートである条件そのものが息をしているような人です。とてもいい人で怖いものが無さそうです。言わずもがな彼のプロデュースするビールはどれも美味しく、期待に漏れず羊と鶏肉がテーブルに踊り並び、肉祭りが今日も続きます。お土産にボトルのビールを何本も頂き、初めて税関でお酒持って来すぎましたと申告しました。

羊と鶏の山
肉とビールの午後

明けて翌日、夜のフライトに向けてTimurくんが車を出してくれ、空港に向かいました。入口のゲートをくぐる時、彼が世界で最悪の空港だ、と漏らしていて、理由を聞くと数年前に空港自体をトルコの企業に売却し、それ以降めちゃくちゃになった、と愚痴っておられました。
それが理由なのか否か、ゲート前の駐車場はカオスを極め、無秩序に停められた無数の車とその隙間から脱出を試みる車、夜空に響き渡るクラクションの嵐、そのまた隙間を縫うスーツケースと人。確かに今まで訪れた海外の空港の中でカオスネスがダントツです。映画『I AM LEGEND』の、ウィルスミスの家族がヘリに乗るシーンがふと脳裏によぎります。

伝わりにくいがアポカリプス30分前のようなカオス

無事飛行機は飛び立ち、アルマトイともお別れです。最後は仁川空港で12時間という長いトランジット。もうビールが入る余地が胃袋的にもマインド的にもありません。プライオリティパスを忘れて来てしまったのが本当に悔やまれます。皆さんお忘れ無く。
というわけで楽しいカザフスタンの4日間が終わりました。また是非訪れたいと思います。プロテインとビールを求めてまた必ず来ると思います。

柏くんをはじめメンバーの皆さん、そして主催方々や現地の皆さん、お疲れ様でした。

デニス・テンよ永遠に

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