この2~30年で太鼓やバチの材料となる木や(動物の)皮の質が変わってしまい、良いものが本当になくなってきたなと感じています。これは日常の食生活と同じように、素材と供給のバランスが崩れてしまったんだと思います。
世界的な気候変動とはスケールが違いますが、身近なところで起きている素材の枯渇や変化に従って自分の表現も変えていく必要があると思っています。
だからと言って、電子ドラムやプラスチックの皮へ全面シフトする必要はなく、良き素材や時代を知る私らが率先して新しい表現を示していければと思っています。
話は変わりますが、先日、ヨーロッパのダンス関係の方とZOOMで話したこと。
この3年間を経て、お客さんが客席に座って(一方向の)ステージと対面して2時間を過ごすことに耐えられなくなっているという話になりました。
私は実感としてはなかったのですが、昨年3月の東京3daysで全方位ライブをしたことを思い出しました。
客席のフロア中央でトリオの演奏をして、本来のステージも含め、その周りをお客さんが囲む超臨場感あるパフォーマンスは叩き手同士のやり取りや音の混ざり方がとても新鮮で大好評でした。
そして、久しぶりのブレンドラムスも臨場感を演出のテーマにしました。
2023年6月23日 新宿ReNY「太鼓と旅してブレンドラムス」写真:橋本和典
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フロアで大太鼓は凄く音がズレまくりまして。でも、臨場感をお届けしたく~。
ダンサーには無音で踊ってもらうシーンを作りました。打楽器炸裂からの無音というダイナミックレンジ。
実は、9月の即興ライブツアーもそのような状況を作れたらと思っています。
そもそも即興ということでテーマ性や作品性はなく、共演者とのやり取りや駆け引きが軸になりますが、先の太鼓やバチの素材の枯渇の話と繋がっていて、このような(不安定な)世の中だからこそ、少し斜(はす)に構えて色々と試していくチャンスかなと思っています。
結局、旅も即興ですし、すべての動機付けもそこかな。