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ほんとにあった怖い話。【閲覧注意】

暑さ寒さも彼岸まで、とはよく申しますが。

毎日暑いですなぁ。

こんな季節ですから少しでも涼を感じていただくためにひとつ怖い話でもしましょうか。

ある男に起こった実話でございます。

昨年12月に高知で初演された舞台
「晴れる夜に誰かの寝息が聞こえる 亀井健作 」が札幌で再演されることになりまして。

自分が音楽監督を勤め、出演もした作品。

札幌にフルメンバーで呼んでいただけるとのこと。

それに合わせて矢野絢子のベストアルバムのレコ発ライブもも札幌でやってしまおうという企画が立ち上がりまして。

札幌の劇団裸のコヨーテ団の全面協力のもと開催されました。

久しぶりの北海道。

嬉しいじゃないですか。

高知在住の3人と関東在住のワタシが北へと向かいます。

高知組
カメイケン 矢野絢子 シマフミ
羽田発9:45   新千歳着11:20

関東組
みたに(大バカ)
成田発9:30  新千歳着11:20

こういう旅程でした。

先入観とは恐ろしいもので。

高知組と羽田で合流して同じ飛行機で行くんだ!

行くに違いない!と完全に思い込んでました。

前日にカメイケンから最終案内のメールが転送されてきたのにそれも華麗にスルー。

それにしても新千歳到着が同じ時間ってワナすぎるでしょ。

気づいたのは6時55分南武線の車内でした。

羽田に向かってはいます。

電車の遅れもなく順調です。

 で も ね。

やだなぁ、やだなぁ、怖いなぁ、って。

なんか違和感がするんですよ。

違和感というより、イヤな予感がしたんです。

メールをよく見返す。

そこには“NARITA”の文字。

二度見どこじゃない。

三度見したぜ。

俺だけ成田発じゃん!

え?まさのLCC?安いから?

なんでだよ!←本音

うおおお、やっちまった。

久しぶりに血の気が引くっていうか。

足が震えましたね。

暑いのに汗が冷たい。

おしっこはかろうじて漏らさなかった。

おい、オレよ。

こういう時こそ冷静になるんだ。

ピンチをチャンスに。

あれ?チャンスはピンチにだっけ?

いかん、焦ってる。

むり、むり、むり!

どう考えてもピンチすぎる!

車で送ってもらえればワンチャンスあるかも!と乗っていた羽田行きの電車を飛び降りる。

実家に鬼電。

誰も出ねぇ!

寝てる!当たり前!

イキオイ余って、出社前の妹にも電話。

「なんにもできないけどがんばって」と言われる。

もう電車で向かうしかない。

調べると成田到着が8時45分。

チェックインの刻限を調べる。

9時ジャスト。

これ間に合うのか?

ちなみにLCCは1分でもチェックインが遅れるとアウト。

一回でも乗り換えミスったらアウトだし、成田空港着いたって改札からカウンターまでどれぐらいかかるかもわからない。

でも行くしかない!

行かねばの娘だ。

20キロを超える各種打楽器達とシンバルスタンドを抱えて汗ダルマになりながら電車を乗り継いで成田へ。

唯一の救いは羽田のラウンジでゆっくり朝飯でも食うつもりで予定より1時間半前に出てたこと。

あとは日頃の善行がモノをいうのだ。

成田に向かう電車の中で落ちてるゴミを拾ったりして、急遽ポイントを稼ぐ。  

神様、見てますか?

通勤ラッシュの中、大荷物を抱えた汗ダルマは直立不動だ。

実況しようと思ったけどほんとに焦ってる時ってTwitterとかもできないんですよ。

もう祈るしかない。

“祈りとは心の所作 心が正しく形を成せば想いとなり 想いこそが実を結ぶのだ”

アイザック・ネテロの言葉だ。

ずっと乗換案内と空港の案内図を見てシミュレーション。

一番うおーってなったのは最後のエスカレーターでした。

あそこ知ってます?

悪意を感じるほど遅すぎるんですけど!

ゴミを拾ったおかげかチェックインカウンターに着いたのが8時54分!

勝った!

アタマの中でファンファーレ隊が準備を始める。

景気のいいやつ頼むぜ。

しかしカウンターで問題勃発!  

ファンファーレ隊、吹くの待って!

20キロ以上の荷物は預けられないんだって!

ちなみにスーツケースの総重量22.5キロ!

2キロ分の楽器を手荷物に分担させたらいける。

「あと3分で搭乗締め切りです」

ウソだろ!

ファンファーレ隊、吹くの待てって言ってるだろ!

またまた汗ダルマになり涙目になりながらチェックインカウンターで荷物を広げた。

マラカスとかトライアングルがこぼれ落ちる。

惨め オブ・ザ・イヤー2023ノミネート決定である。

シンバルスタンドも長さで引っかかりそうになって慌てて分解したりして。

なんとかクリア。

ファンファーレ隊、配置について!

搭乗口に着いたら盛大に吹いてくれ。

保安検査場でもモチロン一悶着あり、これは北海道に行かない方がいいのではないかと思い始める。

もう誰もいない搭乗口。

すでに他の乗客達はみんな機内の中。

そこに見覚えあるスーツケースがあるではないか。

あれ、これワシのでは?と思っていると。

名前を呼ばれる。

危険物が入ってる可能性があると判断されたらしい。

マジかよ!

確認していいですか?と聞かれる。

スーツケースを開けようとすると「触らないで!」と一喝される。

え、お触りなしコース?

目の前で開けられていくマイ スゥイート スーツケース。

中には分解したシンバルスタンドや、シンバル、見るからにアヤシゲなパーカッションがてんこ盛り。

しかもさっきのアレでぐっちゃぐっちゃ。

いちいち中身を指さして「仕事で使うんです」と説明。

なんだよ、マラカスを振る仕事って。

40過ぎてこんな辱めを受けるとは。

何度となく「もうワシ乗りたくない!」って叫び出しそうになる。

そして追い打ちをかけるような出来事が。

ワタシの後ろで「こう言う場合なんで触らせないかわかる?」とまさかの新人研修が始まる。

そうそう、なんで自分のスーツケースなのにお触りできないんだよ!

気になって耳をそばだてる。

答えは「こう言う時にナイフを出されたりするのを防ぐためになんだよ」って。

それコチラに聞こえたらダメでしょうよ、と思ったけど。

新人さんもフンフンフン、って聞いてる。

「こういうことダァー!」ってシンバルスタンドを振り回そうかと思ったけど、もうなんでもいい。

北海道に行けさえすれぱ。

この飛行機に乗れさえすれば。

無事に釈放され機内へ案内される。

心なしかキャビンアテンダントさんが笑ってない気がする。

しかもよりによって席は後ろの方。

刺さる、刺さるよ、視線が。

席に着くやいなや「この機は遅れております。申し訳ありません」と機長のご挨拶。

完全にワシのせいである。

土下座だ。

座席に座っててできないけど。

心の中で百式観音が土下座をしている。

飛行機はそのまま何事もなく離陸した。

空はどこまでも青く晴れ渡っている。

高らかにファンファーレが鳴り響く。

心をボッキリと折られたまま成田から北海道へ向かうのであった。

確認はちゃんとしようね。

ご清聴ありがとうございました。

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